顧客のサイトやECを改善する提案をするとき、何を確認してから入っているだろうか。ページをざっと見て「ここが弱い」「このUIは古い」という感触から提案をまとめた結果、顧客に「それはもうやった」「うちの状況とは違う」と返ってくる。支援会社の提案が刺さらないとき、情報収集の量が足りないのではなく、何を先に確認すべきかの順番が崩れていることが多い。
この記事では、提案精度を上げるために何をどの順番で確認すべきかを整理する。どの会社を使うかではなく、何をどう見るかが目的だ。
第1位:目標と現状のギャップ
提案の軸になる観点。ここを確認せずに入ると、何のための改善かが最後まで曖昧になる。
確認すべきは、顧客が今期何を達成しようとしていて、現状どこにいるかだ。売上なのか、CV数なのか、新規獲得比率なのか。目標の種類によって、優先すべき改善箇所はまったく変わる。顧客が「なんとなく改善したい」という状態であれば、まず目標を引き出すことが先決になる。目標が見えなければ、提案はどうしても感覚論になる。
第2位:現状の数値と主要なボトルネック
目標が確認できたら、ファネル全体の流れと、どこで離脱・損失が起きているかを見る。
セッション数、流入チャネル別の比率、CVR、直帰率、カート放棄率など、持っているデータを一通り確認する。このとき、数値の絶対値よりも推移と比率を重視する。先月比で何が下がっているか、どのチャネルが悪化しているか、どのページで詰まっているか。それが見えると、提案の優先順位を立てる根拠ができる。
数値を見ずにUIや導線の改善を提案するのは、診断なしに処方箋を書くようなものだ。
第3位:施策の実施履歴
過去に何をやったか、何がどう効いたかを確認する。これを怠ると、すでに試して効果がなかった施策を再提案するリスクがある。
確認すべきは、直近1年程度の施策内容と結果だ。ABテストの記録、デザイン変更の経緯、広告の調整履歴などが対象になる。これが揃っていれば、提案の根拠を積み上げやすくなるし、「このパターンはすでに検証済みなので、次はここを変える」という会話ができる。過去施策を知らないまま提案に入ると、顧客から「それはやった」「それは合わない」と返ってくる場面が増える。
第4位:顧客の購買行動と意思決定プロセス
ターゲットが誰で、どう動いて、どこで判断するかを把握せずに、導線やコンテンツを変えても精度が出ない。
確認すべきは、購入前にどこで情報収集するか、何が不安で離脱するか、何があれば購入に踏み切るかだ。これらは顧客企業のマーケティング資料やユーザーリサーチから引き出せることが多い。顧客理解が浅いままだと、「LPのファーストビューを改善する」「CTA文言を変える」といった施策が宙に浮く。誰に向けて、何のために変えるのかが説明できない状態になる。
第5位:社内体制と意思決定の構造
提案内容が実行可能かどうかは、顧客の社内体制に強く依存する。ここを確認しないと、内容としては正しい提案が実現できない、という状況になりやすい。
確認すべきは、誰が承認権を持つか、開発リソースはどこにあるか、施策を動かせる頻度はどの程度か、CMSの運用スキルはどのレベルか、などだ。実現難易度が高い施策を前面に出すのではなく、顧客の体制に合った優先順位を組むことが、提案精度を上げる上で意外に重要になる。
提案の質を決めるのは、確認の順番
ここまでの5つが確認できていないと、提案は感覚論に近くなる。「このデザインは古い」「情報が多すぎる」といった指摘は正しいかもしれないが、それが今の顧客にとって最優先かどうかは、数値と目標を見なければ判断できない。
顧客理解が浅い提案には、共通したパターンがある。課題を「UI/UXが弱い」「コンテンツが不足している」といった曖昧な言葉でまとめ、施策を「改善する」「強化する」で終わらせる。顧客のビジネス状況への言及がなく、どの会社に出しても成立するような汎用的な内容になっている。こうした提案は、担当者には通っても意思決定者に刺さらない。「何がどう変わるか」が説明できないからだ。
提案精度は、情報収集の量ではなく、確認する観点の優先順位で決まる。目標とボトルネックを先に確認することで、施策の根拠が立つ。過去施策と顧客理解を加えることで、提案に文脈が生まれる。体制を踏まえることで、実行可能な優先順位が組める。「何を直すか」より先に「何を確認するか」の順番を整えておくことが、提案の出発点になる。