選定がうまくいかないときの共通構造
評価の精度を上げるために最初にやることは、提案を受ける側の準備だ。提案内容だけを見て判断しようとすると、比較の軸が曖昧なままになる。
今、何を問題だと思っているかを言葉にしておく
数値の動きに限らず、運用の中で感じている違和感も含めて整理する。問題意識が曖昧なまま提案を受けると、提案の良し悪しを判断する基準自体がない状態になる。
成否を何で判断するかを決めておく
改善の効果を、どの指標でどう評価するかを事前に決めておく。これがないと、提案後に「改善した」「していない」の議論が噛み合わなくなる。
この提案に何を期待しているかを整理しておく
代理店に聞きたいことが何かを明確にする。それが整理されていれば、提案を受けたときに「この提案は自分たちの課題に答えているか」という問いで評価できる。
これらが整理されていないまま提案を受けると、提案内容の質ではなく、印象の強さで判断しやすくなる。
よい改善提案に共通する要素
質の高い改善提案には、共通する構造がある。
現状の何が問題なのかが具体的に示されている
「パフォーマンスが低下しています」という言葉だけでは、何が問題かはわからない。どの指標が、どの期間に、どの程度変化しているのかが示されていてはじめて、問題の輪郭が見える。
提案内容と根拠がつながっている
「クリエイティブを変えましょう」という提案があるなら、なぜクリエイティブが原因と判断したのかの仮説が明示されている。仮説があれば、その妥当性を検討できる。
改善によって何がどうなるかの想定が示されている
数値の予測が必ずしも必要なわけではないが、「この施策でどの指標がどう動くか」という方向性がなければ、実施後に効果を判断する基準が持てない。
この3点、問題の具体化、仮説の明示、期待効果の方向性が揃っているかどうかを最初に確認する。
提案が感覚論に終わっているサイン
見た目や説明の丁寧さに反して、中身が感覚論にとどまっている提案は多い。
「改善が必要」という結論から逆算して説明が組まれているパターン
問題があるから施策を提案しているのか、施策を提案したいから問題を後付けしているのか、資料の構成から判断できることがある。結論が先に来て、そこに説明がつなぎ合わされている資料は疑ってよい。
比較対象がないまま「悪い」と言われるケース
「CTRが低い」という指摘があるとき、それは業種平均と比べて低いのか、自社の過去実績と比べて低いのか。比較軸がなければ、その指標が本当に問題かどうかは判断できない。指摘の根拠として「何と比べて低いか」が示されていない場合は、そこを問い返す。
「一般的に」「傾向として」という言葉が多い提案
一般論は参考にはなるが、自社の状況に当てはまるかどうかは別問題だ。提案が自社のデータや文脈から導かれているかどうかを確認したい。
比較軸が弱い提案の見分け方
改善提案の根拠として、何かと何かを比べる視点がなければ、「なぜそれが問題か」の説明が成立しない。確認すべき比較軸は3つある。
①時系列との比較 「CTRが低い」という指摘があるとき、それは業種平均と比べて低いのか、自社の過去実績と比べて低いのか。比較軸がなければ、その指標が本当に問題かどうかは判断できない。指摘の根拠として「何と比べて低いか」が示されていない場合は、そこを問い返す。
②目標との比較 現在の数値は当初の目標に対してどう位置づけられるか。目標設定そのものに無理があった可能性も含めて検討できるか。
③施策の選択肢との比較 なぜこの施策なのか。他の選択肢と比べたうえでこの提案を選んでいる根拠があるか。
これらの比較が提案の中に出てこない場合、根拠が整理されていない可能性が高い。「なぜそう判断したのか」と問い返す価値がある。
実行可能性と改善優先順位の見方
複数の施策が並んでいる場合、どこから手をつけるかという優先順位の判断が必要になる。提案の中にその整理がない場合は、自分たちで考える必要がある。
実行可能性を判断するには、以下を確認する。
- 工数とリソース
- 効果の出るタイミング
- リスクの所在
改善優先順位については、「インパクトが大きいか」と「実行コストが低いか」の2軸で見るのが基本だ。インパクトが小さく実行コストが高い施策が提案の筆頭に来ている場合、提案の構成に問題がある。その順番の理由を聞くことが、提案の根拠を確認する入口になる。
提案を「受け入れるか断るか」以外の選択肢
提案を受けたあとの選択肢は、受け入れるか断るかの二択ではない。
問い返す、修正を求める、優先順位を交渉する。こうした選択肢は、提案内容を評価する軸があってはじめて取れる。問題の具体化がされていなければ確認を求める。比較軸がなければ根拠を問い返す。優先順位の説明がなければ整理を求める。
この観点を事前に持っておくだけで、提案の受け方は変わる。提案の質を引き上げるのは、提案する側だけの仕事ではない。